とてつもなく甘いドーナッツとサリンジャーの名作と。(気分はとある村上さん。)
僕は仕事帰りにドーナツを食べて帰ったんだ。
始めに言っておくけど、この話はたいして中味のある話じゃないから、興味のない人はここで読むのを止めてくれたってかまわない。もしかしたらその方が僕にとって有難いことなのかもしれない。
そのドーナツは、とてつもなく甘いドーナツで、頬張る度に咽てしまいそうになるほどだったんだ。僕がどうして仕事帰りにドーナッツ食べてしまったかというと、今日はひどく疲れていたことが大きな理由として挙げられるだろう。昨日までの長い休みの間、僕は全くというほど運動をしていなくて、それはまるで競争相手のいない亀のように、のんびりとした時間を過ごしていたんだ。そんな僕にとって、今日の仕事の内容はハード過ぎたんだ。どんなことがあったのかについては聞かないで欲しい。それをここで話すとなると、またあのとてつもなく甘いドーナツを食べなきゃいけなくなってしまいそうだから。
とにかく、心も身体も頭もひどく疲れきってしまっていた僕には、とてつもなく甘いドーナツを食べて帰ることを我慢することができなかったんだ。こんな日はきっと君もそうするはずだ。
とてつもなく甘いドーナツをむせそうになるのを我慢しながら食べ終わると、頭の方はだいぶましになっていた。でも身体のほうは相変わらず言うことを聞いてくれそうもなくて、仕方がなく次の時間の電車を見送って、僕は本を読むことにしたんだ。お気に入りの鞄の内ポケットの中にはこんな時の為に本を忍ばせていたからね。
- 作者: J.D.サリンジャー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2003/04/11
- メディア: 単行本
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そんなわけで、僕は無事に家路につくことができたんだ。帰る時間が遅くなったことについては妻には怒っていたけれどね。